「生者が救われるには、どうすれば良いと思うかね」
神父の声と同時に鳴り響いたオルガンの音に、『彼女』は小さな悲鳴を上げた。
その様子に神父は笑い、鍵盤に触れたことで指先についた埃を払う。
「怖いかね」
「あ、すみ、すみません」
「いや、いいのだよ。ここは神に見放された場所であるのだから。祈りに来た君に言うことではないが」
「私は、その……」
教会を目指して来た訳ではないが、祈りたいと思う気持ちはあった。
祈りたい。――救われたいために。
ただ、ここに神はいないと神父は言う。
「神はいない。故に、僕で良ければ君を救おう」
手を差し伸べる神父。迷い人を導く手のはずが――昔と重なる。
連れ去ろうとした男たちと、この神父が重なるのだ。


