血よりも愛すべき最愛



石ではなく木造建築の教会は、歴史があるように思え、目を惹く。引き寄せられるように、『彼女』が教会へ足を進めたのは当然であった。


二枚扉の前に立つ。鍵がかかっていたことで、我に返る。


今は深夜だ、開いている訳がない。何をしているのだろうと、『彼女』が去る前。


「こんばんは、お嬢さん」


背後より声をかけられた。


息を呑み、肩を跳ねさせる。振り返れば、柔和な笑みをした男が立っていた。


「教会に祈りでも来たのかい?」


「え、あの……」


顔を俯かせ、しどろもどろとなる『彼女』の横を通り過ぎ、男は扉の鍵を開けた。


「こんな夜中に訪れるほどだ。よほど“救われたい”のだね。入りなさい、温かいコーヒーでも淹れよう」