「行かなきゃ……」
一人で。
一人じゃないと、周りが傷つくだろうから。
誰かが嫌な思いをするなら、自身が苦痛を呑みたいほど、『彼女』は優しすぎた。
気丈であり冷酷ならば、子供の頃、男に付きまとわれなかったであろうし、暴漢が死のうが涙を流すことはなかった。
美しすぎる顔に相応しい心。『彼女』の魅力は顔しかない――顔しか見ていなかった男たちにとって心など二の次に他ないが。
「――、わぁ」
ふと、『彼女』が立ち止まったのは、さ迷った果ての得を見つけたからだった。
「こんなところに、教会が」
ロンドンで有名なテンプル教会になぞらった建造物が倫敦市(こちら)にもあるとは分かっていたが、自身が知らないだけで、この街にはいくつかの教会があるらしい。


