「依亜ー!そろそろ搭乗時間だぞー!」


お母さんの元にいる空にぃの声。


それはこの幸せの終わりの知らせ。


あぁ、時間が来てしまった。


とうとうここを離れる時がきた。


悲しくないって言ったら嘘だ。


泣きたいくらい悲しいっ。


だけど私は狼鬼の総長・月影なんだ。


ここで弱音を見せることは許されない。


誰がどこで見てるかわかんねぇしな。


それに…頑張ったら戻ってこられるんだ。


みんなとまた会える。


それが今の私の支えになっている。


「そろそろ…時間のようですね」


口調を〝夕凪依亜〟に戻し、視線だけは空にぃを見たままみんなに言う。


今、この顔を見せるわけにはいかねぇ。


きっと泣きそうな顔をしているだろうから。


最後は笑顔でいたいから。