《月美、俺……神戸へ行く事になったんだ》

「え?」

《父の地盤である神戸で勉強して来い、って言われてさ》

「もしかしてっ……あたしのせいで」


あたし達の事がバレたから?

それで神戸に行かされるの?


「光っ!?」

《月美のせいじゃない。全て俺の責任なんだ》

「でもっ……!」

《俺がいけなかったんだよ。月美にも辛い思いさせて……ごめんな》


違う、違うよ、光。


光のせいなんかじゃない。


あたしが光を愛したんだもん。


「いつ……行くの?」

《明日の最終の便で》

「え? そんな急に!?」


嘘。



明日なんて、もうすぐじゃない。

そんな……


「光、少しだけでも……。えっと、だからね……」


“会える時間ない?”

そう言おうとした時だった。


「月美様、奥様がお呼びになられていますが……」


ドアを遠慮がちにノックするお手伝いさんの声に、携帯を胸元へと抱いた。


「わっ、わかったわ。すぐに行く」


お手伝いさんの足音が小さくなるのを確認すると、携帯を耳へと戻した。