「天堂」

 
「ん?」


「賭けしようよ」




寿川の川縁に座って釣りをしている天堂の隣にちょこんと座っているのは白狐の白



賭けと聞いて片眉を上げる




「うん。おいらが勝ったら百鬼夜行に入れてよ」


「んなもん桜李に言え」


「えー…じゃあ、術かけさせてよ」


「…何でだよ」


「おいら狐だよ?」




にんまりと笑った白はいたずら好きの狐。白狐は善の妖怪なはずなのにいたずらばかりして天堂や桜李を困らせている





断ろうにも満面の笑みを向けられる。以前にもとんでもない目にあったのだが、まだ子供だから仕方無いだろう…付き合ってやるか




「分かった分かった。ワシが勝ったら、そうじゃな…十六夜をメロメロにしろ!」




うーん、と唸ったと思ったらパッときらきらな笑顔を近づけて来た天堂に仰け反り頬が引きつった



またそんな…十六夜は天堂を想ってるはずなのに…自分よりも子供染みた願い



「…分かったよ」




意気揚々と釣糸を垂らした天堂ににやり、と笑う白だが、その悪そうな笑みに天堂が気づくはずもなく




「よしっ、一時間の勝負だ!」