「ねぇ獅蛇、稽古して強くなろうとしているのは立派なことだと思うの。でもどうして急に始めたのかな?」


「…んなこと知るかよ。桜李、二代目になって一新しようとしてんだろ。親父に負けないようにな」


「……そんなに焦らなくてもいいのに」


「…」


近くに落ちていた赤い風車。獅蛇が宵美に買ってやったのだろう。手に取って吹き掛けるとからからと小さな音をたてて回した。気づいている様子は無いが疑い始めたか。元々鈍くない、自分の命が狙われてるとなればなおさら…


「いつ帰んの」


「何、帰って欲しいの?」


「いやそうじゃねぇよ。だってこの後行くんだろ?」


「うん、獅蛇も来る?」


「………あぁ」



そういうと珍しそうな顔をした十六夜。意外、と顔に書いてある。本来なら行かないが十六夜のためだ



「ん、…」


置いて行こうとした二人だが宵美が起きてしまった。あー、と罰が悪そうにした獅蛇は十六夜を先に行かせて屈む



「おい、ちょっと出て来る。結界張ってるから出るなよ」



「えぇ!?はい、早く帰って来てください」



十六夜と二人で向かうのは荒れ地より本家に近い墓地。弟である朔の墓の隣にある墓。その墓標に刻まれている名は




"刹那之墓"