「千愛実っ」
人混みのなかから走ってきたのは、龍牙だった。
なんで?
あの子は?
龍牙は私の肩をを掴んでいた男を蹴り倒すと、立て続けに他の二人の男の溝を蹴った。
怯んだその隙に、龍牙は私の手をとって走る。
人の少ないところに出ると、龍雅はバチンと私の頬を両手で挟み込んだ。
「お前っ、勝手にフラフラすんじゃねぇよ!」
その龍牙の顔は本当に怒った顔をしていた。
「ごめ、ごめんなさいー……っ、ふぇぇ……」
龍牙は溜め息をつくと、そっと私の頬から手を離した。
「で?なんで一人で動いたりした?」
「私っ、あの子に嫉妬しちゃって……」
「嫉妬?」
「私の知らない龍牙をあの子は知ってるし……ひくっ、あの子の方が私より、龍牙のこと分かってあげられると思ってっ……」
「それで?」
「あの子は龍牙のこと、好きだからっ……あの子には私は勝てないと思って……私は、いない方がいいんだって……」
「で、一人で動いたと」
コクンと頷いて、私は涙を拭う。
「千愛実」
ふと名前を呼ばれて顔をあげた瞬間、龍牙の整った顔が目の前にあって、唇には温かくて柔らかい感触があった。



