早朝からそんなことがあって、いわゆる“恋のキューピッド”中。


『朱音ちゃんに好かれてねぇの分かってるけどよ~……俺のにしたいの!』


何回も頭ん中リピートされるちなの必死な言葉。


頑張れちな。



「……ねぇ聞いてる~?風真!」

「んっ!え、なに!?」

「あたしといるのに上の空。何考えてたのさ?」

「大したこと……ねぇよ」


不服そうな面持ちで、俺の前を歩く。


後ろ姿でさえ好き。大好き。


こんな細くて小さい紬は見失ってしまいそう。



「意外とー……同じ高校……会わないね」

「そうだな~。広いからみんな散らばってんだろ」

「同級生みんな……いないじゃん?」


俺の隣に来て歩幅を合わせて、困った顔で顔を覗き込む。


「……素直に言えたらもっと、かわいかったのに」

「だ、だって……」


ぎゅっと小さな手を握った。


強がりな幼なじみからの不器用な合図。