【紬side】



夏の終わりを切なげに鳴くセミ。


まだ残暑残る夜8時、風真んちなうです。


「着替えとパスポートと……おっけ?」

「ん。おっけー!パスポート無くしそうだわ」

「無くしたら絶対にダメ!分かった!?」

「分かってるっつーの!」


髪をくしゃくしゃしながら、旅行用の大きなカバンを漁る。


はぁ~……


彼氏彼女の関係になっても変わらず、あたしをガンガン頼る風真。


これは、明日から始まる4泊6日の海外行きの修学旅行の荷物確認。



「ほんとにごめんね~紬ちゃん。風真が紬ちゃんにどーしても確認してほしいって言うから……」

「あっ、いえいえ大丈夫です!」


風真の部屋からひょっこり美人なお母さんが覗く。


「ちょっ!ノックしろよババア!」

「はぁ?どの口がそんなこと言ってんのかなぁ~。ババアって誰?」

「ははっ……そんな…お、お姉さん…!」


風真が情けなく見えるほど、風真母は恐い!


元ヤンって噂もうちのお母さんから聞いたし……。