兄様、そう相手は呼ぶと寝台の横にある椅子に腰掛けた。

栗色の髪は項の部分で揃えられ、意思の弱そうな、けれど芯の強い瞳に雪より白い、透き通るような肌。

まだ年端もいかぬ少年、明良の弟である月夜(つきよ)は真っ直ぐに明良を見詰めると、額へ手を当てた。

「…うん。熱は大分下がりましたね」

優しい微笑で言われ、明良は胸が温かくなる。


月夜はふたつ違いの弟で、明良より三月ばかり早く生まれた。明良ほどではないが体が弱く、幼少時からふたりは互いに看病し合っていた。


「…月夜、飯」

はい、微笑み盆に載せた茶碗を胸元まで持ち上げ、中に入っている粥を口に含み明良へ口付けする。

「ん…」

くちゅ、と濡れた音がし、適度な温度の粥を飲み込む。

普段なら、一口食べたらすぐ次が来るのだが、今日は中々二口目が運ばれない。不審に思い月夜を見詰めると、彼は熱情に溢れた瞳で明良を見詰め返した。