ご近所恋愛(笑)

「やっと理解できた?ああ、言っとくけどこのことは他言無用だから。ここにまでファンが来たら迷惑だし」


「…分かりました」


「あと、君にサインはあげないから」


「いりません!」


誰がサインなんか欲しがる物か。いや、意地でも欲しがらない。

だが、先ほど暗闇でよく見えなかった顔がよく見えて、本当に美形だなと再確認した。

ミルクティー色の緩くウェーブがかかった髪の毛をいくつかのカラフルなピンで横に止めていて、綺麗なコバルトブルーの瞳。服装はさすがアイドルというか、とてもオシャレだった。帽子はさすがに室内だからか、とっているけれど。


「泉さん、ここにいる人で全員なんですか?」


「住人か?ああ、これで全員だな」


私はぐるりと辺りを見渡した。なんていうか、私の予想がドンピシャで当たってしまった。

みんなイケメンの男子。女は私一人という鉄板な設定。多分、これネタに少女漫画が作れると思う。


「はぁー…」


「貴様のため息は飯がまずくなる。物思いにふけるなら他所でやれ」


「…すみません」


確かにご飯中にため息をついた私が悪い。だが、もう少し金原さんの物言いもどうにかできないものか。

右隣りは金原さん。左隣りは八雲さん。

確かにいい人達はいるが、もう少し部屋の場所は違う所がよかった。三万で住まわせてもらっているのだから、文句なんて言えないけれど。

ばれないように私はもう一度小さくため息をついた。

これから、どうなるんだろう。

そんなこんなで、私の波乱万丈な引っ越し一日目は過ぎ去った。