これまで経験したことのない強い衝撃を受けて、私の身体は後方にどさりと倒れた。

白いシャツの上の赤い染みがどんどんその範囲を広げていくのが分かる。



「…し、死ぬほど、痛いんだけど」


死ぬんだから当たり前だけれど。

痛くて苦しくて、本当に死にそうという言葉以外には表現しがたいほどの激痛だった。


「ごめんね、ちょっと手元が狂っちゃった」

「…そう」


心臓を撃ち抜いてほしいとお願いしたはずだったけれど、どうやら彼にそんな技量はなかったらしい。

今更後悔しても遅いけれど、もっと至近距離で打ち込んでもらうべきだったのかもしれない。

否、それよりも、


「今ふと思ったんだけど、即死するには、脳みそいった方がよかったかも」

「そうだね、口の中から脳幹を確実に仕留めれば、こんなに苦しまなくてよかったと思うよ」

「知ってたんなら、最初からそう言いなさいよ」


激しい痛みに顔を歪ませながら彼を睨めば、彼はまた泣きながら笑った。


「ごめんね、即死してほしくなかったからさ」

「…どう、して」

「少しでも長く君と会話してたかったから」


つまり、彼は確信犯だ。

引き金を引くとき、おそらく故意に急所を外したのだ。

……全く、余計なことをしてくれる。



「私は“彼女”じゃないわよ?」

「それでも、俺は君が好きだよ」



人間なんかよりもずっと人間らしい表情で、彼は告白した。


こんな場面で“好き”なんて、苦しいはずなのに笑ってしまう。




―――嗚呼でも。

きっとすべてはそこから始まった。