簡単に言ってはみたが、問題は山積みだ。

はたしてリルアムは今更の異動志願を受け入れてくれるだろうか。

自分がいない間、リルアムとシアの仲がいよいよ深まってしまったらどうしよう。

待っていてくれるとはいえ、実際、どこまで上り詰めれば、彼女はプロポーズを受けてくれるだろう。
その頃には自分もシアも退官間際だったりして……。


レンカは浮かぶ迷いを、首を振って散らした。

それでも、自分は決めたのだ。
スタートラインに立つと。


やがて二人の視界を覆っていた森が開けた。

リリ川を挟んだ山間の草地に、遊撃特殊の29名が集まっているのが見える。
挟撃は他の班に任せ、おそらく、二人の捜索を出すか否かを相談しているのだろう。

レンカが声を発する前に、彼らが二人を見つけた。
凄まじい歓声が上がる。


「シア隊長!」


「シア隊長!ご無事で!」


「レンカァ!生きてやがったな!」


「よくやった!」


隣でシアが少しだけ笑った。


「まったく、うるさい連中だ」


レンカはシアと並び、手を振る仲間たちへ向かい馬の歩みを速めた。






<了>