レンカは自らを奮い立たせ、口を開いた。


「シア隊長、今日はご遠慮させてください」


「は?」


「今日は……リルアム統括と過ごされた方がいいです」


はっきりと言い切ると、シアはレンカの態度の意味と苦しみを理解したようだった。

すっとベッドから立ち上がり、レンカの近くにやってきた。

背の低い彼女が、上司の距離間でレンカを見上げる。
彼女が恋人の距離まで歩み寄るのはいつだって行為の間際だ。


「気遣っているつもりなら見当違いだぞ。レンカ・トラジェン」


馬鹿にするように、冷淡に言うシア。

その口調は珍しく感情的にも聞こえる。
レンカは首を振る。


「あなたを見ていればわかります。お気持ちの有りどころくらい。今日は代役ではなく、本当に想う方と過ごされるべきです」


こんな言い方をしては、こちらの気持ちを知られてしまう。

そうは思っても、歯止めが利かなかった。

いや、おそらくシアは気付いているだろう。
レンカが自分に抱く格別の執着を。


シアは少し黙り、やがてふうとため息をついた。