広間の50有余名がざわりと揺れた。


「最前線への異動となる。無論、志願には付加価値を付けよう。戦士隊長の地位を与える」


この言に別な意味でざわつきが起こる。

戦士隊長といえば、歩兵部隊では百名単位の部下を束ねる立場だ。
いかに遊撃隊が精鋭といえど、待遇は一般兵士と差はない。

この異動は単純に栄転の示唆だ。

しかし、急拵えの軍隊でシナシの艦隊と戦うことの危険さは誰しもの頭にあった。

海戦の覚えがあるものもほぼいない。
勝算がどれほどあるのかは、おそらく隊本部ですらわからないだろう。

最悪、シナシ軍の本土上陸を防ぐため、壁として死ななければならないかもしれない。

栄転と死地を天秤にかけ、はたして、何名の者が応じるだろうか。


「志願者は近日中に申し出ろ。直ちに異動となることも念頭におくように」


全員がはっと短く答え直立する。