そっとドアを閉め、レンカは暗い廊下を隣の棟にある自室を目指し走った。

誰に会ったこともないが、逢瀬を誰かに見られるのは禁忌だ。
それは彼女との約束であり、この関係を継続させる意味でも重要だ。

たどり着いたレンカの私室は一般兵士用のもので、狭く、先までいた上官の居室の三分の一もない。
ベッドとクローゼット、小さな庶務机がひとつで終わりだ。

レンカはベッドにごろりと転がった。

自室の天井はやはり安っぽい白塗り。
こんなに待遇が違う人間と自分が関係を持っているなんて、いまだに信じられない。


シア・ラークス。


レンカの上官であり、ハダ帝国軍第一遊撃隊・隊長である。

レンカは半年以上前から、彼女の逢瀬の相手を務めている。