「おまえが新兵なのもいい。
長らく、ともに戦禍をくぐってきた部下どもは、私に過度の愛着がある。連中、他に女がいないもんだから私に理想を見ているんだ。いざこざを作って士気を下げたくない」


その言葉は、レンカの思考をやや正常に戻した。
つまり彼女は、レンカが一番部外者に近いと見込み、秘密の片棒を担がせたいのだ。
同時にこれは釘さしでもある。

関係はあくまで身体だけ。
「過度の愛着」は抱いてくれるな、と。


「どうだ?もう一度言うが、断っても構わない」


「かしこまりました。お受けします」


レンカは間を置かず言った。

早い反応に、シアが軽く目を見開く。
断りを想定していたようだ。


「そうか、助かる」


「シア隊長」


素肌のシアにレンカは一歩寄る。
部下の態度の変化に、シアがかすかに肩を揺らした。


「では、その……契約の口付けを……してもいいでしょうか」


「それは構わんが、ここで最後までは許さんぞ」


レンカは憧れの人を抱き寄せ、深く唇を合わせた。

初めてのキスだった。