「あ、紫乃先生と光さんって、カナリアがきっかけで出会ったんですか?」


最近入ったばかりの10代の生徒さんはそう言うと、雑誌のインタビューの部分を指差した。


それは光とのなれそめについて聞かれ、渋々答えたときの記事だ。



「ええ。ペットの鳥が逃げて泣いていた私に、彼が声をかけてくれたの」


「すごく運命的な出会いだったんですね」



本当に、そうだと思う。

私の人生はあの日の出会いを境に変わったのだから。



だけど、ふと考えることがある。


かごの鳥を逃がしたのは誰だったのだろう、と。



開いた窓から出てゆくカナリアの、せわしない羽音や姿ははっきり覚えているのに、

どうやって逃がしてしまったのかを、なぜか思い出せなかった。



そのせいかもしれない。



あれは、私たちを出会わせるために誰かがわざと放ったのだと

時々考えてしまうのは――。