私という存在は、彼が見つけたもの。

私という人間は、彼が育て上げたもの。


だったらどこまでも寄り添ってゆくのが、自然なことのように思えた。


彼だけを頼りに、彼の隣だけを自分の居場所にして。





「……光」


初めてそう呼んだときの気恥ずかしさは、全身がいっきに熱くなるほどで、


「やっぱり照れくさいよ! 今まで通り“お兄ちゃん”でいいでしょう?」


赤く染まった顔で懇願するわたしに、彼は意地悪っぽく微笑んで言った。


「ダメだよ。自分の夫を“お兄ちゃん”なんて呼ぶ女性は、どこを探してもいないだろ?」



それは彼が25歳、私が21歳の時だった。


私たちは神の前で誓いを交わし、夫婦になった。



ウェディングドレスより、薬指のリングより、何よりも嬉しかった“光の妻”という称号。


彼の手で与えられた、新たな居場所だ。



はっきりと名前のあるこの関係がどれほど私に安心と誇りをもたらしてくれたか、

きっと彼には想像もつかないのだろう。




「光くん、紫乃さん、おめでとう」



披露宴の招待客から贈られる祝福の言葉が、フラワーシャワーのように私たちの周りを舞う。


あまりの幸福感に圧倒されそうだった。


目の前に広がる未来のまばゆさに、私は目を細めた。