「ん…」
どれくらいこうしていただろう。
太陽が少しだけ傾いている。
「あ…おはよう、白兎。大丈夫?」
うっすらと眼を開ける白兎に首をかしげて尋ねてみる。
「……」
ぼけー。
…寝起き悪いなぁ…
「もしもし?」
寝ぼけている白兎の頬をぺしぺし叩いた。
「んー…んん…あり…アリス…?」
「目、覚めた?」
にっこり聞くと、兎は少し止まって
「…アリスゥ!?」
がばっっっ!
「うわわっ、し、白兎…!?」
いきなり飛び起きた兎は、とても動揺していた。
「あ、あああ、アリス…アリス…すみませんごめんなさい…!!」
うわぁうわぁと左右に歩き回る兎。
…膝枕に問題が?
初々しい反応だなぁ…

『何をてこずっているのですか?』
緩くウェーブのかかった美しい金髪が揺れる。
『は…、申し訳ございません、女王様…
白兎が我々の作戦を』ぷつん、と糸の切れた人形のように床に倒れこむ、スーツにサングラスの男。
その2歩ほど後ろに、倒れた男と同じ顔、同じ体格の5人の男たちが、片膝をつき頭を下げて並んでいた。
『あなた方も…処分されたくなければ、猫を追うことだけ考えなさい。…過去は忘れるのです。』
男が倒れた場所には、一枚のトランプ。
男の姿は消えていた。

「静かに!!」
私が一喝すると、兎はやっと大人しくなった。
「もう…男が膝枕くらいでわーわーわめかないでよ!」
「……はい…」
騒ぐ私の背後に揺れる影があることを、私は知るよしもなかった。