「ストーップ!文、何いちゃついてんの?」

男の人の声がする。

それと同時に唇が離れる。

ちっ、と舌打ちが聞こえたのは、気のせい?

「何ですか?先輩、僕は今この娘と話してるんですけど」

へたりこんだ私を庇うように立った月見里君の不機嫌な声。

先輩?

誰?

「いやいや、嫌がってる子に無理矢理キスすんのは駄目だろ、文」

月見里君を諌める先輩の声に彼は肩をすくめる。

「どうだか。僕、先輩がそうやって女落としてんの見たことあるんですけど」

少し月見里君の口調が荒い。

苛立ちと、不安?

ポーカーフェイスの月見里君にしては珍しい。

すたすたと足音がして月見里君が肩を掴まれ退かされる。

苛々しながらも傍観する月見里君。

座っていた私に手を差しのべてくれた先輩の顔を見上げると、思わずドキッとしてしまう笑顔。

「俺は、藤堂蓮(とうどう れん)。文の中学からの先輩だ。よろしく」