私の『夫を裏切れない』という言葉に、光は見たことのない悲しい表情をした。




そして、サラサラの髪をかきあげて、窓の外の月を見た。




「そっか・・・そうだよな。ごめん、俺・・・藤乃を困らせちゃって。」



光は、少し微笑んだ。


その表情がとても愛しく感じた。




本当は、拒んでも強引に抱きしめて欲しかったのかも知れない。



光が、力なく閉めた扉を見ていると涙が止まらなくなった。




本当は、光に抱かれたかった。



もっと、自分の気持ちを伝えたかった。



こんなにもあなたを愛してるということを知って欲しかったんだ。




溢れる涙は止まらなく、

夜風で扉が音を立てるたびに私の胸は張り裂けそうになる。