夢から現実へと引き戻す電話の音。



光へのドキドキと、電話に驚いたドキドキが混ざり合う。





光はさっと立ち上がり、いつもの低い声で電話に出た。



電話の相手は、夫だった。




「はい、大丈夫です。何も変わりはありません。母さんはもう眠っていると思いますよ。日本はもう夜の11時ですから。」




電話を切った光は、真剣な表情でゆっくりと私に近付いた。




「父さんが心配してたよ。藤乃は寂しがっていないかって。どうする?藤乃…本当にいいの?俺は、今夜・・・藤乃を抱きたい。」




あまりに真剣な光の表情から、彼の覚悟が感じられた。




「・・・光、私もあなたに抱かれたい。でも、やっぱり夫を裏切ることはできない・・・」




本当は、乱れた白いシャツに抱きつきたかった。




あの力強い腕に抱かれ、星の数ほどのキスをして欲しかった。





あの電話がなければ…




あの電話で、私は光が息子であるということを思い出してしまった。