初めて会ったのは、私がまだ18歳の頃だった。



まだ恋の切なさやもろさも知らなかった純粋な私。



政治家の秘書をしていた母に連れられて、どこかの偉い政治家のおじさんの自宅に招かれた。



妻に先立たれ寂しい生活をしているというおじさんは息子と2人暮らしだった。




重い大きな門は、赤黒く光っていて、玄関まで何分もかかる大きな庭には、白い梅がほんの少し咲いていた。




まだ寒さの残る初春だった。



「初めまして。藤乃と言います。」



おじさんが紹介した息子はまだ小学生だった。




くりっとした目で私をじっと見つめた幼い男の子は、中庭の梅の木の影に隠れたまま、近付いてはくれなかった。




「僕は…光。」



それだけ言うと、池にかかる細い橋を渡り、遠くから私を見た。




目が合うと、光君はまるで妖精のようにフワフワと庭を駆け回った。




太陽の光が、揺れる池の水面を照らしていた。