不器用な恋

「お兄様、どうしたの?」


私がそう言うと、お兄様は口を開いた。


「この前、仕事で…たまたま、大手広告代理店に言ったんだけど…」


ボソボソと、何を言っているのか分からないようなか細い声で、お兄様は話した。


「源 光さんという人に会ってね」


お兄様がそう言うと、私は耳をダンボにした。


「とても綺麗な男の人だった…。心が洗われるような感覚がした…」


光さんは、菩薩か、大仏?
私は首を傾げていた。


光さんは、女の人だけじゃなく、男の人にも、そう思われるんだなあ…。


「ところで、花憐」


話は終わってしまったのだろうか。
と、ガクリと肩を落とした。


「これから、女人とデートするので、あれをかしてくれないか…」


女人(にょにん)って…。
お兄様、デートするんだ。


「あれって?」


「春なのに、まだ冷えるから…お前のマフラーを、貸してくれないか」


お兄様が言ってるのは、光さんからもらったマフラーの事だろうか。あれは…。