腕枕で眠らせて*eternal season*




「…どうして…!?私じゃダメなの…!?」


月明かりの影を落とす綺麗な顔が、私に詰め寄られ困惑に染まる。


「玉城さんはとても素敵な女性だと思います。ただ、今の僕は仕事の事しか考えられないんです。本当に申し訳ありません」


だったら尚更、私と付き合うべきじゃないの?仕事でも私生活でも1番近い存在として、私を必要とすればいい。


感情が昂って納得がいかない。


「嘘…!そんなの理由にならないでしょ!どうして私じゃダメなの!?他に好きな女でもいるの!?」


激昂した私の言葉に一瞬、彼の表情が変わった。

その事実に、今度は私の顔が驚きに染まる。


「…本当に…?好きな女がいるの…?」


けれど。

彼はその質問に肯定も否定もせず、ただ静かに…困ったように微笑んだ。


「仕事の事しか考えられないと言ったのは嘘でも誤魔化しでもありません。今の僕はもっともっと頑張りたいと思ってるんです。

もっと沢山の人と出会い、沢山の事を学んで。そして…僕は幸せにならなくちゃいけないんです」



その答えはとても真摯だった。

けれど、私の欲しかった答えはその中には無くって

その答えの奥にある彼の本当の心も理由も、私には見つけられなかった。





その夜は、悲しい気持ちより納得出来ない気持ちの方が強くて、なかなか眠れなかった。


……彼は、私の事をとても必要としていて。そして、確実な好意もあると思う。

それは仕事上のパートナーとしてはもちろん、多少なりとも“女”としても。


彼は無意識に私に甘えている。

彼の意思を先回りして汲み取る私に。


いつも休憩時に、彼の缶コーヒーを一緒に買ってきてあげる事も

送られてきたサンプル品をチェックしやすいように開封して並べておいてあげる事も

デスクのメモも付箋も、彼が使いやすいと言った物を欠かさず置いてあげてる事も


今や全てが“日常”になっている。


私が仕事の枠を越えてしてあげている事に、彼は無意識に甘えている。

“玉城夏々が自分に尽くす事”が“普通”だと。


それが、恋情以外のなんだと言うのか。