腕枕で眠らせて*eternal season*






やりがいのある仕事と全従業員に優しいオーナーの人柄。

そのせいか【pauze】で働く人は皆、長続きした。


店長の私と副店長の野原さんはもちろんの事、山下さんを始めとするパートやアルバイトまで、辞める人は本当に少なくて、皆このお店をとても愛していた。


けど、そんな中でも問題は起きる事があって…

「オーナーって…素敵ですよねぇ」

その大抵は、このように彼に惚れてしまった女の子が起こすのだった。


まあ、好きになっちゃうのはしょうがない。あれだけカッコ良くて性格もいい男だし無理もない。ジッサイ私だって惚れてるわけだし。


でもねえ。それ、仕事に持ち込まれちゃ困るんだよね。


「店長~。高野さんが私にシフト変われってしつこいんです~」

「だって、火曜日だとオーナーお店に来ないんだもん!お願いだから水曜日と変わってよお!」


こういう問題を起こすのは大抵高校生や大学生。あとは


「西田さん、レジ放っぽといて何処行ってたの?」

「あ、すいません、ちょっとトイレに…」

「…もうすぐオーナーが来るからメイク直しに行ったんでしょう?」

「ギクッ」


なんてのもあったなあ。

あと厄介だったのは人妻。「夫と子供を捨てる覚悟です!」なんて、とんでもない宣言してたのまでいたっけ。


けど、結局オーナーがどの想いに応える事もなかったんだけど。




「玉城さんすみません、なんか僕のせいで高野さんが随分シフトでワガママ言ってたみたいで」


「あら。その口振りだとどうやら彼女に告白されたみたいですね」


「ええ…まあ」


「で、なんて答えてあげたんですか?」


遠慮なく聞いた私に、彼はパソコンを打つ手を止めてデスクの缶コーヒーを一口飲むと

「ごめんなさいと、お断りしました」

ちょっと困ったように、そう言った。