そして、その2週間後。
対策の甲斐あって犯人は特定され、現行犯でそれを捕らえる事が出来た。
客足の多い日曜日の午後を狙って行われた犯行。
レジを通さない品物を持って店を出たひとりの女性客に、私は声を掛けて事務室へと連れていった。
さて、しかしどうしたものか。
その女性はすんなり犯行を認めたものの同時に突然大声で泣き出した。
「警察には言わないで下さい!もう二度としません!だから警察にだけは!」
オーナーには『犯人が見つかったら、すぐに警察に連絡を』と言われている。
けど、私だってひとりで万引き犯と対峙するなんて初めてだし。
「家には病気の親がいるんです!心配掛けたくないんです!ごめんなさい!もう絶対しません許して下さい!!」
いい歳して鼻水まで垂らしながら号泣する女にドン引きすると共に、躊躇も生まれる。
「あのねえ、そんなに泣き喚くぐらいなら最初からするんじゃないわよ」
「ごめんなさい、親の介護が辛くてストレスで無意識にやってしまったんです」
「無意識って、そんなの病気じゃない。それじゃ反省したって治んないわよ」
「ごめんなさい、これからは病院に行きます。二度としないように治療を受けますから。だからどうか警察にだけは」
…うちだって冗談で商売をやってるワケじゃない。万引きは許せない。けど。
本人は自業自得だけど、この人の親があまりにも不憫に思えてくる。
責任を負うのは彼女ひとりだけでいいんじゃない?なんて考えが頭を過った。
前に働いていたお店では万引き犯には賠償金と入店禁止の誓約書で対応していた。そういう償わせ方も有りじゃないか、と。
ベソベソと泣く犯人を見ながら腕を組んで考えていた時。
打ち合わせから帰ってきたオーナーが事務室へと入ってきた。



