渋滞している道路を戻りながら、ふたりもはや呆気に取られる。
「……紗和己さん……」
「……はい……」
「…これはもう、今日は出掛けるなってコトなんだと思う」
「…僕もそう思いました」
皮肉な今日の運命に、ふたり憤りも落胆も通り越しただボーゼンとしてしまう。
「家に帰って先週見れなかったDVD観ましょうか」
「うん。それで一緒におやつにワッフル作ろう」
「そうだ、頂き物の栗があったんだ。せっかくだからマロンワッフルにしましょう」
「わあ、美味しそう。うふふ、栗剥いてたらあっという間に時間過ぎちゃいそうだね」
当初の予定はキレイサッパリ白紙だけど。
家でふたり、ゆっくり過ごすデートも私は大好き。
だって、こういう機転が利かせられるのも、夫婦ならではでしょ。
「晩ごはんの買い物はどうしましょうか」
「冷凍庫に牛肉があるからそれで済ますよ。トマト缶もあるからハヤシライス作る。それでいい?」
「もちろんです。一緒に作りましょう」
中止になったデートの帰り道は、どしゃどしゃ降りの雨音が楽しく聞こえてきた。
雨の休日の過ごし方。
自宅のダイニングで、弛くかけたボサノバのCDを聴きながら、黙々とふたりで栗の皮剥き。
「さっきのDVD面白かったね」
「ですね。またあの監督の映画借りてきましょう。あ、美織さん、手気を付けて下さい」
「うん、大丈夫。紗和己さん器用だねー。大きな手でよくそんな小さな栗をチマチマと」
のんびり、のんびり、優しく流れるふたりの時間。



