……ケダモノだ。

今日の私たちはケダモノだ。



「今日の私たち、本能の三大欲求に従ったコトしかしてない気がする」

「……………」


あまりの自分たちの野生ぶりに、反省と恥ずかしさで枕に顔をうずめた紗和己さんは無言だ。


明るかった筈の寝室もすっかり暗くなり、私は疲れた身体をのっそり起こして部屋の電気を着けに行った。


パッと部屋が明るくなった途端、紗和己さんが寝そべっていた身体をガバッと起こす。


「…すみません…せっかくの休みなのに欲望の赴くままに過ごしてしまいました…6時間も…」


赤くなった顔を片手で覆いながらものすごく申し訳なさそうに言うその姿は、ハッキリ言って面白い。


「ふたりでしたコトなんだから謝られても。それに、私は嬉しかったよ。たまにはこんな休みがあってもいいじゃない」


時間を気にせず思う存分愛し合えるなんて、贅沢極まりない休みの過ごし方だと思うけどなあ。

まあちょっと欲望に忠実過ぎたと言えば過ぎたけど。


「…そりゃ僕も嬉しいですけど……。日々、欲望に抗えなくなっていく自分に恐怖を感じますよ」


私は、複雑な色を浮かべて紗和己さんが座っているベッドへと戻って告げた。


「いいじゃない。紗和己さん、普段はいっつも忙しくてストイックなぐらいなんだから。お休みの日くらい思いっきり欲望的に過ごしたって」


瞳を下から覗き込むようにそう告げると、紗和己さんの表情が安堵と愛しさに綻ぶ。


その笑顔に私も笑みを返して

「お腹すいたね、そろそろ晩ごはん――」

言い掛けたところで…なんと唇を塞がれてしまった。


「え?」


そのまま腕を掴まれコロンとベッドに押し倒される。


……ウソでしょ?


「じゃあ、お言葉に甘えて」


「ええっ!?ちょ、ちょっと待って!!」



私のバカバカバカ。

ケダモノ全開の彼の欲望を舐めてた私のバカ。


後悔するも時すでに遅し。


どうかなってく頭の片隅で、“30代の男の人ってこんなになの?”と生物の不思議についてぼんやり思った。