堂々と本命の座を手に入れた公香との関係が楽しかったのは、せいぜい2週間だった。
もう美織と鉢合うような心配が無くなった事で、俺は公香を部屋に呼び寄せ半同棲の生活を始めた。
近くなりすぎた距離で、途端に見え始める不満の数々。
「え?飯食ってきちゃったの?」
「うん。企画課の佐藤さんに誘われて。お寿司食べて来ちゃった」
別に、公香に飯を作って待っててくれなんて、美織みたいな事を期待してるワケじゃない。
けど、せめて一緒に食ってくれたっていいじゃん。こっちは残業して疲れて帰ってきたって言うのに。
テレビを見ながら自慢の爪を磨いてる公香を横目に、買ってきた弁当を味気なく食べた。
「でさー、そいつがムカつくの。なんか言うこともキモくってさー」
夢中になって喋る公香の話から意識を背け、俺は缶ビールを呑む。
「ねえ、聞いてる?」
「聞いてるよ」
テキトーな返事をしながら、うんざりとした視線を送った。
あーあ。コイツの話、悪口ばっかだな。
気分が毒される。
誰かにムカつき、扱き下ろして笑い、疲れて帰ってきて耳に入れられるのはそんな話ばっかりで。
…公香ってこんな女だったけ、と思い返してみるけれど。
そうだ、以前は刺激的なセックスと二股の背徳に酔っていて、ろくにゆっくりと会話なんかしなかった気がする。
「なんか違う話題ねーの?」
「はあ?何それ」
むくれた公香はそっぽを向き、無言でスマホをいじり始めた。
二人きりの空間で、つまらない時間が流れていく。



