それからは、トントン拍子ってやつ。


そりゃそうだ。好意のある男と満更でもない女が毎晩のように部屋で二人きりになるんだ。何もない方がおかしいだろ。



「端柴くん、晩ご飯食べていってね。大したもの作れないけど」


「楷斗」


「えっ?」


「楷斗でいいよ。俺も美織って呼ぶから」



確か、そんなやりとりだったと思う。俺たちが正式に恋人になった夜の会話は。

そして、初めてキスをする直前の会話でもあった。





「最近、楷斗と美織ばっかり仲良くしてズルいなー。私も交ぜてよ~」


「あはは、ごめんね愛子。今度うちで3人でご飯食べようよ」


「俺は構わないけど、目の前でちゅーとかするよ?」


「うわ、楷斗最低!」



俺と美織と愛子。同じ部署の同期はこの3人だけだったせいで俺たちは仲が良かった。

そんな平和な毎日がとても楽しかったし、何も不満は無い筈だったんだ。





ただ。


「ちょ、ちょっと待って楷斗。あの…今日は…」


美織はあまりセックスに積極的じゃ無かった。


大学時代、処女を捧げたという先輩は就職で地方へ引っ越し、3ヶ月の遠恋の末に別れたとか。

つまり俺は美織のふたり目で…正直、彼女はほとんどセカンドバージンと呼んでもいいような状態だった。


性に貪欲な俺と、不慣れで消極的な美織。


今思えば、俺がリードしてやれば良かっただけの話なんだけど。


そんな事、その時の若すぎる俺が気付く筈ねえじゃん。