秋の夕暮れ。

ひとりぼっちの部屋でサンキャッチャーの硝子を紡ぐ。


手の中の硝子に夕焼けが反射して、キラキラと眩い。

キラキラ、キラキラと、幸せを詰めこんで煌めかせるように。



……今まで、いっぱいサンキャッチャーを作ってきたなあ。


私のサンキャッチャーで幸せになれた人はいるのかな。

いっぱいいるといいなあ。



祈りを籠めながら紡いできたサンキャッチャー。
私でも誰かの幸せを願いたくて紡ぎ続けてきた。



紗和己さんには3つ、作ったんだっけ。


ひとつはストラップだけど。顔も知らない会ったこともない“サワちゃん”を励まそうとして、幸せになって欲しくて一生懸命紡いだ。


ふたつめは、『好き』って言われた後だったね。傷付けてしまった貴方に苦しいほどの『ごめんなさい』と、優しい貴方への誠意を返そうと心を籠めて作った。


みっつめは【pauze】の3号店のお祝いに。お店の、貴方の、幸せを祈って作った。輝かしい未来の成功を願って紡いだんだよ。


いっぱい、いっぱい、願って紡いだのにね。



ゆるく開いた窓から、近所の公園で遊ぶ子供たちの声が漏れ聞こえてくる。

手の中から、硝子ビーズが涙のように煌めきながら零れていった。




初めて会った日も…私はこんな風に硝子を落としてしまって。
割れた破片で小さな傷を作った私の体を「もっと大切にして下さい」って、貴方は心配してくれていたね。


時を重ねて、ゆっくりと、ゆっくりと、私に笑顔を増やしてくれて。信じる気持ちを思い出させてくれて。

私が恋に一歩踏み出せる日をずっと待ち続けてくれた。


大きな手でいつも私を包んでくれて。
冬のデートで初めて手をつないだ日も、手を繋いだまま隣り合って寝た夜も、不安な私の頬を包んでくれた時も、いつも温かかった。


いつだってどんな時だって、貴方は私を守ってくれて、温めてくれて。

計りきれないほど愛してくれて。

数えきれないほど幸せをくれて。


大好き。
大好きだよ。紗和己さん。


いつも穏やかで優しいところも、ロマンチストで照れ屋なところも。時々見せる子供みたいな得意そうな顔も、私しか知らない情熱的な顔も、みんなみんな大好き。


大好き。

大好きだから。


「……ごめんなさい……」


いっしょにいるのは、お互い苦しすぎるね。