「…僕も行きます。
いっしょに検査を受けます」



きっぱりと。
そして、明るく言いきったその声に、私は驚いて顔をあげた。


涙で滲む視界に映ったのは、いつもの笑顔でゆったり私を見つめる、紗和己さん。


「ズルいですよ、美織さん。ふたりの問題なのに、ひとりで決めちゃうなんて。いっしょに行きましょう。休み、ちゃんと作りますから」



ポロリと、目に溜まっていた涙がひとつ零れていった。


向かいの紗和己さんが腕を伸ばし、ゆっくりとそれを拭う。


「ふたりで考えるべきこと、でしょう?」


そう言って掛けられた微笑みに、抑えていた涙が溢れだし止めたくても嗚咽が止まらなくなった。


席を立ち上がり、そんな私を抱きしめながら紗和己さんが髪をふわりと撫でながら言う。


―――僕たち、夫婦なんですから。



と。






優しいね。紗和己さんは。


私、その優しさに何度救われただろう。



いつもいつも助けてもらってばかりで


私、いつになったら貴方になにか返せるのかなあ。





3ヶ月にも渡って行われた検査は

肉体的にも精神的にもとても辛くって。


痛くて、苦しくて、家に帰ってもベッドでうずくまる私のお腹を紗和己さんはずっと撫で続けてくれて。

またいっぱい心配を掛けてしまって、それがとっても苦しくて。


それなのに。




「水嶋美織さんに抗精子抗体陽性の反応が出ました」




どうして私は、貴方に何もしてあげられないんだろう。