一晩、悩んだ。
けれど結局、たどり着ける答えはひとつだけで。
「おはようございます、オーナー。昨日は送って下さってありがとうございます。
それと昨夜言ったこと、気にしないで下さいね。引き摺られるとこっちがやりにくいんで」
それは全然本意じゃないけれど、でもきっと貴方が言って欲しい言葉だと思うから。
悔しいけど、悲しいけど、貴方に望まれる私でいたい。
どんな理由か知らないけど今の貴方に恋をする気がないのなら、私は――
――私は、貴方の片腕として1番側に寄り添ってみせる。
「来月から新しいインテリアオブジェをひとつ入荷します。とても素晴らしい品物なので大きくスペースをとって大々的に扱うつもりです」
それが、私の4年間の恋心をどん底に突き落とす始まりの合図だった。
ある日、打ち合わせから帰った彼がいつもより高揚した様子でそう説明した商品は『サンキャッチャー』という硝子のオブジェだった。
その商品は確かに綺麗だったし、よく売れた。
けれど、硝子が明るく輝くのと反するように私の心は暗く雲っていく。
「…また見てるんですか?」
店に来るたび、サンキャッチャーのコーナーで足を止め目を細める彼の姿に。
「ええ。本当に綺麗だなと思って。…なんだか揺れる光を見ていると幸せな気分になるんです」
そう言って穏やかに微笑んだ、今まで見たことのない幸せを滲ませた彼の笑顔に。
心の奥で静かに燃えていた恋心が、醜く歪んでいく。



