「ただいま.」



って夜中の1時じゃ誰からの返事もないが.


上へあがると,


兄貴の部屋はまだ灯りがついていた.



起きてんのか…



「まだ起きてんの?」


俺の足音は聞こえたはずだから,


ドア越しに訊いてみた.


「ああ,おかえり.

お前は早かったな.

もっと遅いかと思った.」


雅弥がドアを開けた.


「まぁな.女多いし.

なんかあっても困るだろ?」


「そういうことなら,遅い気もするけど…」


雅弥はそれ以上は言わなかった.


「何やってたん?」


「あー,本読んでた.


読み出したらこんな時間で.」


「げっ.本当かよ.

相変わらずだな.

で,

和泉にメールしたわけ?」


「あ?」


ストレートに和泉の話が出てくるとは思わなかったらしい.


雅弥はマヌケな声をだした.


「軽くな.」


そしてそっけなく答えた.


「あいつさみしい奴だからよぉ.

今頃喜んでんじゃね?w」


と,ふざけて言った.

今にもあいつの睨みが飛んできそうだ.


「ホントお前和泉にべったりだな.」


雅弥が呆れて言った.



「ちげーよ.かまってやってんだよ.


俺,まじで女に困ってねぇし.」


「ハハっwまぁ,それは否定しない.


でもお前,


他の女と和泉は違うんじゃねーの?」


「それってどういう意味だ?」


「俺はそう見えた.


それだけだよ.


気づいてないならいんじゃね?」


雅弥は肩をすくめてそんな事をいい,


最後におやすみと言って部屋に戻った.


俺は閉まったドアの前で,


少しの間とどまっていた.