俺の髪の色,

気にくわねぇの?



和泉は少し笑って,



「気にいられたいだなんて思ってないんでしょ?」


と言った.


そして,続けてこういった.




「その色を見たら,


大抵の人が記憶しているだろうね.



とても,目を引くよ.



とても,印象に残る.


あんた自身を認識してない人にだってね.」



「見た目で判断してるって話だろ?


お前だってそうじゃん.」



「そうだよ.


見た目で判断する.


目だけじゃない.


耳,鼻,肌,使える感覚を全て使って判断する.



一番使いやすいのは目.



どうやっても目で判断する.


でも,それで終わりじゃない.」


「どういうことだよ?」


「あんたは,その見た目でメリットも得ながら,

デメリットもあって,


そしてリスクも背負ってる.



うわっオレンジって思うことも,


ああ,オレンジって思うことも,


へぇ〜オレンジって思うこともあったよ.」


「何言ってるかさっぱりなんだけど.」



「そのオレンジは目立つ.


見たくなくても見てしまう.


思いたくなくてもオレンジだと感じる.

それでも,


その色に負けないあんたの明るさだとか強さだとかがあるって,


すぐわかったし.


そしてそれが,





羨ましい一方で,


私には到底真似できないとも思う.」


俺が黙っていると,

和泉はさらに続けた.


「そのオレンジが,


こんなに似合う人を初めて見た.



みかんうまいな.」


和泉はみかんを頬張って,

これで終いだと言わんばかりだった.



そこでようやく俺にも分かる言葉が出てきた.


和泉は,

俺の髪色が気にくわないわけでも,


不満をもっているわけでもなかった.


ただ単に見た感想を言って,

ただ単に感じとった気持ちを言っただけに過ぎない.


そして,


その感想は今でも変わることはないが,


その感想に含まれていなかった俺の中身は,


しっかりとプラスされているらしかった.



だけどよ,


もっと簡単に言ってくれよな.