とはいっても,

私はわりとうまくやっていた.


わりと上手く,

付き合えていたのではないかと思う.



その全てが少女漫画にありがちなシーンだった.

そのことに疑問すら感じなかった.

だって,それしか知らなかった.

そういうものだって信じて疑わなかった.



私は,恋する乙女だったと思う.

そして,彼も,

恋する男だった.

何もかもが初めてで,

何もかもが輝いていた.



「…手をつないでもいい?」


ためらいがちに彼は言った.


「え…,うん.」


素直に,うんと言えばいいのに,

恥ずかしさで言えない.



時間は,

ゆっくり,ゆっくりと

流れていた.