「兄貴顔はまぁまぁなんだから,

もっと遊べばいいのによ.」


と,冴俊は余計な事を言う.


「そのうちな.」




初めて和泉を見かけたのは,


大学の入学式だった.



スーツに着られてる感じで,

ぎこちなかった.


どうして覚えているかというと,


和泉は,まるでシンデレラのように,

片方の靴が脱げて転びそうになった.


スーツだけじゃなくて,


ヒールも履き慣れていないようだった.



和泉は,辛うじて転ぶことはなかった.

運動神経は悪くないらしい.


俺はその後ろに並ぶところだったから,


まるで王子のように…って


これは恥ずいな.


まぁ,普通にその靴を拾って,

和泉の足下に置いた.


和泉は,


「わぁーすみません.

ありがとうございます;;」


と言ってすぐに靴を履くとまた列に戻ってしまった.


一瞬の出来事だった.


でも俺は覚えている.