「神尾さん,それなんすか??」

冴俊が,青い男が手にしていた紙袋を指して訊いた.


青い男は,ゆっくりとこちらを向き,

微笑を浮かべながら,




「芋.」


と,答えた.


イモ??

「イモっすか?w」


私が心の中で訊き返すのと,

冴俊が声に出して訊き返すのがほぼ同時だった.



「腹減ったし,食うかな.」


神尾は紙袋からおもむろにサツマイモを取り出し,


さっと水にさらし,


レンジへと放り込んだ.


10分くらい経っただろうか,


ピーッピーとレンジがなり,


ゼミ室にサツマイモの香りが充満する.



おそらく,

このゼミ室で芋を温め,

貪り食った者は,

この男が初めてだろう.