俺様のくせに、なんだかんだ優しいことに、

私はもう気付き始めている。



無視したって良かっただろうに、数学教師から私を助けて。


自分の家に連れてく時は、手を握って。


歩調も、合わせてくれて。




ものっすごい俺様で、意地悪な奴だけど・・・

優しくもあるって。





そんな奴の優しさに気付けば、なんか胸がきゅぅってなるって。


もう、気付いてる。







でも。


どうしてそうなるのか、は、よく分からないんだ。




そんで、そうしてコイツが『惚れさせる』なんて言ったのかも。


そもそも、なんで私に構うのかも。



まったくもって分からない。








「・・・い・・・・・・おいっ!」



突然の大声に、ビクッとした。




「な、なんだよ?」


ドギマギしながら聞けば、奴がため息をついた。



「さっきから、どっち方面か聞いてんのに

『なんだよ?』はねぇだろ。」



どうやらボーっとしてて、

奴をガン無視してしまっていたらしい。



「わ、わりぃ。えっと、上り方面だ。」


慌てて今の駅を確認し、そう答えた。


その答えに奴は頷いた。


「じゃ、行くか。」


「おう・・・って、いや、ここまででいいから!」



ここまでで充分だ、と伝えれば。


奴はじっと私を見た後、言った。



「・・・・・・分かった。気をつけろよ。」


「あ、ああ。ありがとな。」



俺様な奴の優しさにうろたえながら、私は奴と別れた。