「なんでって、待ち伏せしようと思ってたからな。」


俺の顔なんか見たくないのだと、再確認して少しへこみつつも。

俺は平静を装って答える。




「待ってた?佐藤をか?」


なぜだか、かすれた声で言った石原に、俺は思わず首を傾げた。




「佐藤?誰だそれ。」


言った瞬間、思わずというように、石原が俺を見た。まじまじと。



「森井、それジョーク?全くおもしろくないが。」


「は?なんでジョークなんだよ。マジで佐藤って誰だ?」



石原の顔が見れたことに内心嬉しくなりながらも、そう答えた。



石原はハッとしたように、またすぐに顔を背けた。


そして、やっぱりかすれた声を出した。



「佐藤は、佐藤真理のことだよ。

お前の彼女だろ?」





「俺の彼女・・・?

そんな名前の奴・・・いた、ような?」



曖昧に答えれば、石原は俺をじとっと見た。





「その反応、マジ?」


「マジ。」



頷けば、一瞬なぜか石原の瞳がキラッと輝いた――が、すぐに。






「うわああああああ!!!最低だぁぁぁあぁ!!!」



との叫び声があがった。




確かに俺は最低だが、なんで自分に言うように叫ぶんだ?石原。






石原は深呼吸をして落ち着いた後、改めて俺に聞いてきた。



「じゃ、誰を待ち伏せしてたんだよ?」


「お前。」



さらりと答えれば、「は?」と、間の抜けた返事が返ってきた。





「お前って・・・・・・私!?」


「そうだが。」


「え、え、え、え、え、え!?な、なぜに!?」



俺は、動揺しまくる石原に、静かに言った。






「お前、何かされてねぇかと思って。」