「なに!?怖いんだけど!!髪抜くんじゃねェだろうな!!?」

「抜かねーよ。そのちょんまげ直してやるからこっち向け」

「ちょんまげじゃねェって!」

恐る恐るふり向いて睨んでくる佐川に、悪いことしたと思いながらちょんまげに触れる。

「…一本でも抜けばお前の髪の毛貰うからな」

ゴムを取って形を整えた。

「わかったって」

何度かコイツの髪を結んでいて、もう手慣れてしまったらしい。

ぱちんとゴムを鳴らす。

「ん、出来たぞ佐川」

「…………」

「…………佐川?」

もとの位置に戻り椅子に座るも、なにも反応しない佐川に声をかけた。

「!」

ハッと目を開き弾かれたように顔をあげた。

「佐川、どうした」

眉間に皺を寄せる。

どうしたんだ一体。

「あ、いや別に。なんでもねーよ、こっち見んな」

「見んなもなにも、お前顔赤いぞ」

「なっ」

「熱でもあったのか?」

机に身を乗り上げ手を額につけようとすると、グッと手首を掴まれた。

「この天然タラシがァァ!!お前は俺をなんだと思ってやがる!!少女漫画の主人公じゃねーんだよ!!」

「は?なに言ってんだ、僕は熱を…」

「それが少女漫画だっつってんだよド天然!!馬鹿野郎!つかこれはお前がされる方だろ普通!!」

「なんで僕がされる側なんだよ」

「なんでってそりゃあお前がおん………」

廊下側に気配を感じ、ふとそっちを向く。




「……おい」