訊夜「瑞希。」


シーンと静まった幹部室に私の名前を呼ぶ訊夜の声が響き渡る。


話そうと口を開くが、言葉が出てこない。


誰一人喋らないので、重たい空気が流れる。

みんなの顔を見るのが怖くて俯く。

気持ちだけが焦り、目に涙が溜まってきた。

涙腺ゆるんだかも。


5分くらいが経過した頃、誰かが私の手を握り、背中をさすってくれた。


その手は優しくて温かかった。


この手…知ってる。
克の手だ。


克の手に背中を押され、話し始めた。



瑞希「実は、私の名前は斉藤瑞希じゃないの。」