長く手を合わせるあたしを
ジンは黙って見守っていてくれた。
ゆっくり瞳を開け
ジンを見るともういいの?と
優しく問いかけてくる。
あたしさっきよりも少しすっきりした顔で
ジンに頷いた。
ジンはそれを見て「わかった」といい
あたし達は来た道を戻る事にする。
ジンに手をとられながら。
足元に気をつけながら。
車に向かって歩く。
その瞬間、
向かい風がビュゥっと吹いた。
ほんの一瞬
でも強い風。
あたしはハッとして顔を上げる。
歩みを止めるあたしを
ジンが不思議そうにみつめた。
「どうした?」
「先に行ってて、ジン。」
あたしはそう言って
身を翻し方向転換する。
「え!カナ!?」
ジンが驚きあたしを呼んだ。
「ゴメン、
すぐ戻るから先行ってて」
あたしは足元に気をつけながら
シュンの元へ早足で戻った。
「はぁっ・・はぁっ・・・」
お墓の目の前に戻り
あたしは息をついた。
無機質で冷たいそれは
さっきと何も変わらず
そこに佇んでいる。
シュン、
今あたしの事呼んだでしょ。
心の中でそう問いかける。
返事はない。
シュンらしい。
あたしはお墓の敷地に足を踏み入れ
手袋をはずした。
一番高く聳え立つそれに
そっと触ると
不思議なぬくもりがある、
そんな気がする。
あたしはそれにそっと頬を寄せ、
そしてシュンに急かされるかのように
優しくキスをした。
