気がつくと、
あたしはまた廊下にいた。

「処置室」と書かれた扉をみて
あぁなんだ、夢だったんだと思った。


「カナ!!
気がついたか!」

ジンがあたしの顔を覗き込む。

「・・ジン?」

その隣にはまた別の看護士が
あたしの様子を伺っていた。


「カナさん大丈夫ですか?
手を握ってください。
痛いところはありますか?」

そういわれて彼女の手を握り
小さく「ないです」と答えた。

そして今度はあたしに微笑みかける。


「軽い失神ですね。
どこも打ってなさそうですし
もう大丈夫ですよ。」


「すみません、
ありがとうございます。」

ジンが何度も彼女にお礼を言った。

彼女はいえいえと言いながら立ち上がり
どこかへ消えてしまう。


天井を仰ぐあたしを
ジンがそっと撫でた。

「警察の人は帰ったよ。
取調べは明日でいいって。
カナが倒れたから
一緒に付いててやれってさ。」


「そう・・なんだ」

その言葉を最後に
また廊下は静まり返る。


現実は現実だった。
何も変わってなんていない。

脳が、考える事を拒否する。
事実を受け入れる事を拒否している。

あたしはそっと目を閉じた。

思い浮かぶのは
シュンの姿ばかりだった。


ジンがあたしの胸の上で
顔を伏せる。
何も言わずに。
ただ小刻みに方が震えていた。

きっと、泣いてる。
ジンの髪に指を通し
そのしなやかな髪をゆっくりと撫でた。

あたしの頬にも涙が伝った。