「カナ・・・・」

家の中からジンの声がした。

サヤカちゃんの手首を掴んだまま
ジンの方に振り返る。

ジンは息を切らし
部屋着のままそこに立っていた。


「ジン・・・」


ジンと一晩ぶりに視線を交わす。
ジンの瞳は思いがけない色をしていた。

あたしの訪問に驚くものでも
嫌悪でも喜びでもない。


ジンの目は、あたしと同じだった。


同時にジンも、それを感じ取ったようで。

あたしたちは言葉を交わさずに
お互いの状況を把握した。


あたしとジンは
真っ先にサヤカちゃんを家に入れ
後ろ手で玄関の鍵を閉める。

逃げ場のない
俯いたままのサヤカちゃんの顔色は
とてつもなく悪かった。