シュンは答えないまま
リビングにある棚の引き出しを開けた。

そこから救急箱を取り出し
あたしのところへ持ってくる。


質問の答えを聞きたくて
シュンを目で追い続けた。

シュンはソファのそばに跪き
あたしの膝を掴むと自分に向ける。


「やっ。
何!?」

「消毒するから。
動かないで。」


何を?
そう思ってふと自分の膝を見た。

「あっ・・」

膝が赤く擦り剥けている。
気づいた瞬間ずきずきと痛み出した。

シュンは片手で
あたしのふくらはぎを支える。

もう片方の手はピンセットで
消毒液を含んだ綿を摘み
傷口に近づけた。


「しみるよ」

一言言われて
あたしは近くにあった
クッションをぎゅっと握る。

ひんやりとした消毒液が傷口に触れ
あたしはビクッと身体を振るわせた。


「痛い?」

上目遣いで聞いてくる。
あたしは首を横に振った。

シュンはそんなあたしを見ると
視線を戻す。

手の甲で自分の髪を
耳の後ろにかき上げると
あたしの膝をぐっと寄せた。

そしてまた、
ピンセットを傷口に当てる。


ズキッ・・!

「ぃたッ・・!」

さっきよりも沁みて
またビクッとしてしまう。


「大丈夫、もうちょっと我慢して。」

シュンはグッと膝を支えたまま
丁寧に傷口を消毒してくれた。