「カナ眠い?」

ポパイが聞いてくる。
あたしは薄目を開けてポパイを見た。

「うーん。
ちょっと。
運転したし、疲れちゃった。」

「じゃぁこっちきて。」

ポパイはそう言うと
腕を差し出す。

あたしはその腕に
素直に頭を乗せた。

そのまま腕枕の状態で
あたしはうとうとと
軽い眠りに入る。


ポパイの香りは
ちょうどいい媚薬のよう。

微かな夢をみて 
そこで昔のポパイに会った。




働き始めたばかりの会社で
初めて大きなミスをしてしまった日の帰り道

ダンボールに入っていた子猫。


薄いグレーの毛並みは柔らかく
小さなその子は
あたしの手のひらに乗るサイズだった。

あたしをその大きな瞳で見つめ
か細い声で鳴く。


迷わず家に連れて帰り
母親に話すと
意外とすんなり受け入れられたんだ。

本当に本当に
君は可愛くて。

それにとても人懐っこかった。

人間に捨てられていたという事実なんて

まだまだ小さくて幼い君には
分からなかったのかもしれないね。